南出メリヤス:ニット職人 インタビュー

ニット作りへのコダワリと、その裏にある想い

idy編集部は、大阪にある老舗婦人服専門メーカーで、日本のファクトリーブランドの先駆け的存在である南出メリヤス株式会社とそのブランド「NARU」へのインタビューを実施しました。
「NARU」へのインタビューでは、会社やブランドとして「日本製」や「自社製造」にこだわる想いやブランドの目指す未来についてお話を伺いましたが、この記事では製造の現場でニット製造の責任者として働くベテラン職人の藤本利幸さんにお話を伺ってきました。
現状日本国内で販売されているニットのうち国産は1%に満たないと言われています。そんな中で、現場の職人としての想いやコダワリ、背景にあるクラフトマンシップ、また業界の未来について、色んなことを教えていただきました。明るく謙虚でモノづくりに誠実な素敵な方、藤本さんのお話をぜひお読みください。

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NARU[南出メリヤス]

歴40年のベテラン職人

– 藤本さんのこれまでの経歴を簡単にお聞かせください

父がニット職人だったことから、高校卒業と同時にニットの道に入りました。今年で58になりますのでもう40年になります。実家で働いていたところから始まり、だいぶ省略しますが(笑)、それからいくつかの工場で働き、南出メリヤスに入ったのは今からちょうど10年前になりますかね。南出として自社で本格的にニットもやりたいということでお声がけしてもらった形です。

– 職人さんというと下積みというか見習いの時期も長いイメージですが

そうですね、時代も時代でしたし、実際ニットは傷直しや柄組みに機械の調整など細かい作業がとても多く、ある程度のことを任せられる、一人前になるには10年くらいかかったかと思います。40年職人をやっていて今では大抵のことはわかるようになりましたが、それでも日々勉強だと思っています。
南出メリヤスに入った段階でも30年の経験があったので、ニットの編み機を設置するところ、つまり0から設備や環境を作ることに携わらせてもらいました。経験が活きたなと思いましたよ。欲しい機械や糸が調達できないなど、大変なことだらけでしたけどね(笑)。

ニットを編むための糸、多種多様な糸が何十箱も並んでいた

– ニット製造の工程をざっくり教えていただけますか

ホンマにざっくりでいうと、編み→裁断→縫製→リンキング→プレス→検品という感じですね。生地を編んで、商品を組み立てるパーツを切り出して、全体の形を作って、襟や袖などのパーツをくっつけて、形を整えて、検査する。これが一連の流れです。細かく言えばもっとたくさんの工程があります。

– 糸から一気にニットの形になるものだと思っていましたが、細かい工程があるんですね

今は技術が発達しているので、確かに機械で一気に編めるようなものもあるんですが、それは中国などで特定のデザインのものを大量に生産する場合がほとんどですね。国産のニットは多品種小ロットでの生産になるので、そういうやり方だと合わない。様々なデザインに合わせて自由に商品を作りたい場合は、どうしても工程を細かく分けてそれぞれを丁寧にやる必要があります。最終的な品質もその方が高くなると考えてます。

絶えず動き続けるニットを編む機械、綺麗に整備されている

マニュアルは自分自身、経験と感覚の仕事

– ニットを作る上でのコダワリや誇りを教えてください

誇りやこだわり…ちょっと難しいですね(笑)。当たり前ですが、いいものを作る、というのは常に考えてますね。指先の感覚や肌触り、自分の経験と感覚を信じてやってます。同じ糸で同じ機械でも、気温や湿度、機械の調子で日によって全然仕上がりが変わったりするので、常に細かい調整が必要だったり。縮絨(ニットを洗いにかけることで、毛糸のふんわりとした風合いを出す作業)も洗う時間を仕上がりの理想に合わせて分単位で変えたり、水だったりお湯だったり、もちろん使う糸によっても全然違いますしね。最終的にはデザイナーさんや営業さんと打ち合わせて調整するんですけど。

-(同席していた南出さん)商品のデザインですとか一定の仕様はもちろん細かく指示出しするんですが、風合いですとか生地の厚みですとかはかなりざっくりした注文で藤本さんにお願いしています。それをどんな方法でどう実現するかは全て藤本さんの経験にお任せしているんです。

– めちゃくちゃ格好良いですねそれは!ふんわりしたイメージから理想の商品を作り上げると

ありがとうございます(笑)。糸探しから始めて、各工程どうしたら理想に近づけるか、いいモノを作れるかを試行錯誤してやってます。経験が活きる楽しい仕事ですよ。

– 工程の中で特に難しい点ですとか、より良い着心地を実現するために工夫している点などは

難しいというと、正味全部結構難しいです(笑)。
度目(ニットの編み目のループの大きさ)の調整、0コンマ何mmでの編み針の調整、編んだ生地の巻き取り加減、縮絨、糸の硬さに応じたロウ引きなど…全部が経験でしかわからない部分ですし、全部が着心地に影響する要素です。生地の編み方にも色々あって、スタンダードな天竺ですとか例えば片畔ですとか。また機械で編んでいるとどうしても糸が切れたり撚れが発生したりするんです、この修理:傷直しができないと全部ほかす(全体をダメにする)ことになってしまうので仕事にならない、ただこれだけでも5-6年やらないと身につかない技術だったりとか。
よく機械で編んでるっていうと、糸を機械にくっつけてスイッチ押したらそれで終わりだと思われる方も多いんですけど、実はめちゃくちゃやることあるし、細かくて難しいんですね。

– 正直私も近いイメージを持っていましたすみません…(笑)
– それらはマニュアル化できるようなものじゃないってことですよね?

そうですね、なかなかマニュアルに起こせるものじゃないかもしれません。自分の経験と感覚を信じるしかないですね。

これら一本一本が針、これらの微調整を感覚で頻繁に行う

ただ、いいモノを作るだけ

– 商品を着たお客さんに感じてほしいことなどはありますか

やっぱり着心地がいい、直接肌に触れてもチクチクしたりすることなく、違和感なく気持ちよく着られるなということですとか、できるだけ長年愛用してもらえたら嬉しいとか、そういうことは思いますね。

– どんなシーンで着てもらいたいですとか

うーん…なかなか難しいというか… 

-(南出さん)どんなシーンでとか、どんな生活スタイルの人に着てほしいとか、そういったことは私たち企画や営業サイドが考えることなので…

あっ!なるほど、じゃあ藤本さんはとにかく目の前の商品をいいモノに仕上げるということだけに集中されているということですね。めちゃくちゃ職人だ…格好良いです本当に

そんな大層なことじゃないんです。僕にはそういうのはわからないというのもあるし。ホンマにいいニットを作るってことしか考えてないかもしれませんね。

– なるほど…記憶に残っている、思い入れのある商品はありますか

南出メリヤスに来て最初に作った商品、ランダムリブニットですね。機材や環境を0から整えて作った商品なので思い入れがあります。今でも定番の商品として皆様に使ってもらってる商品だということもありがたいですね。綿100のニットなど編んだことのないタイミングでしたので、その試行錯誤も含めていい思い出です。

糸にロウ引きをする機械、その判断も藤本さんの感覚とイメージ

58歳が一番年下の業界

– 職場やニット作りに携わる人々について、この人はすごいなとか尊敬できるなという方について教えてください

僕さっき言ったように58なんですけど、南出のニット作り(関連する近隣の工場の方など含めて)の中で一番後輩なんですよ。僕が一番下で、平均したら70くらい、一番上は80歳超えてる。それでも仕事はとても丁寧ですし正確なんで、みなさんホンマに尊敬してますね。ただ…

– それはすごいことですけど、業界としてはマズいですよね

そうなんです。みなさんお年で後継者もいないことが多い。僕の仕事と同じように感覚でやってる方ばかりだからマニュアルにして引き継ぐこともできないんですね。

– もしその…それらの技術が途絶えてしまったら南出さんはどうなるんですかね

-(南出さん)確かに次の工場も後継者も見つかってないことが多いので、かなり深刻な問題です。そのために実は、今度藤本さんの下にも一人若い子を採用することになっています。でもそれだけで解決できる問題ではないので、できることからやっていかないといけないですね。職人のイメージをもっと良くする、いろんな方にこういう仕事を知ってもらう必要があると感じています。

この辺も昔はもっとタオルとか、紡績や縫製が盛んだったんだけど、最近は地域としても少なくなってきているしね。現場としてもなんとか次を育てていかないといけないと思ってます。

私たちに解説をしてくれる藤本さん、柔和な中にも職人の凛々しさを感じた

まだまだ新しいことがしたい

– 藤本さんとして、これからなにか新しい取り組みですとか、やりたいことはありますか

そうですね、新しいことはどんどんやっていきたいですし、そうじゃないと進歩がないですからね。編み組織、編み方や柄のことですけど、デザイナーさん達と協力して今まで僕もやったことも見たこともないような柄の編み方をやってみたいなと思います。
またニットは基本的に冬の仕事なので、通年生産できるように、需要があるようにしていきたい、そういう商品を作らなきゃいけないなとも思っています。ニットの永遠の課題なんですけどね(笑)。

– それは技術でどうにかできるものなんですかね

糸ですね。素材次第で可能だとは思います。今もリネンですとか和紙でできた繊維ですとか、そういったものはあるんですけどいざ編もうとすると強度が足りなかったり、編めないことはないんですけど価格とのバランス的に実現が難しかったり。新しい素材への期待もありますが、私たちの技術としてももっと色々検証していかないといけない部分ですね。

工場の風景、同時に何台もの編み機を動かし、緻密な調整を繰り返す

ホンマに地味で、ホンマに楽しい仕事

– 最後になりますが、藤本さんにとってニット作りとはなんですか

恥ずかしいね(笑)。恥ずかしいけど、ホンマの地味な仕事で、ホンマに楽しい仕事ですよ。
自分ではセーターとか着ないけど(笑)、ニットを作るのは大好きですし、モノを作ってる時間が何よりも楽しい。細かい作業も好きだし、機械を際限なく調整するのも好きなんです。楽しくなきゃやってらんないよ(笑)。

– 藤本さんニット着ないんですか!(笑)
– この仕事はいつまで続けられるおつもりですか

できる限りだね、できる限りずっとやっていたい。少なくとも、今度入ってくる下の子が育つまではやめらんないですしね。彼にも楽しいと思ってもらえるまでやりますよ。

– 本当に最高の職人さんですね、しつこいですけど本当に格好良いですし尊敬します。
– 本日はこの忙しい時期に、本当にありがとうございました。藤本さんの次なる一手を楽しみにさせていただきます…!

編みを観察し傷直しや針の調整を行う、静かで繊細で、ただただ格好良い

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