出雲 Spice Lab.
スパイスを通じてワクワクを届ける
みなさんは「スパイス」にどんな印象をお持ちですか。「カレーに入っている」「辛い調味料」「難しい、料理上手しか使えない」というイメージを思い浮かべる方も少なくないかと思います。
唐辛子から作られる辛い「チリペッパー」やカレーの香りとして代表的な「クミン」がいわゆるスパイスとして有名ですが、スパイスは料理に様々な香りを味をつけるために利用されるもので、その他にも数多くの種類があります。例えば私たちが日常的に使う「こしょう/ブラックペッパー」「にんにく」「しょうが」もスパイスの一種ですし、パンやコーヒーによく利用される「シナモン」、うなぎに欠かせない「山椒」など、スパイスは意外と身近なものなんです。
使用される料理もカレーばかりではなく、高級フレンチからハンバーガーやラーメンなどのファストフードまで様々な外食で欠かせないものですし、パンやドレッシングにポテトチップスや洋菓子まで市販の食品にも多くのスパイスが利用されています。コーラが炭酸水と砂糖、そして秘伝の配合のスパイスから作られていることをご存知の方も多いのではないでしょうか。
最近では手軽に本格的な味や香りの料理を作るためのミックススパイスが様々なメーカーから発売されたり、スパイスやハーブをふんだんに使用したエスニック料理への注目が高まるなど、スパイスは私たちにとってより身近な存在になってきています。
しかし人気が出てきているとはいえ、国内でスパイスを栽培/生産している農家さんはまだまだ少ないのが現状。
そんな中、島根県で2020年から国産スパイスの有機栽培や、スパイスを利用した食品の販売に取り組んでいるのが、今回ご紹介するブランド「出雲SPICE LAB.」の皆さん。農薬や化学肥料を一切使用しない農法で栽培したスパイスを使用して、試行錯誤を重ねた独自の調合のクラフトコーラやカレーなどの製造/販売を行っています。代表である山田さんのスパイスや商品への想い、農業や地域貢献の面白さなど、「出雲SPICE LAB.」の背景にあるブランドストーリーをご紹介します。
出雲 Spice Lab.について
移住したからには地域に貢献したい
出雲SPICE LAB.の代表である山田さんは2018年に島根県雲南市に移住して、「心から面白いと思えることをやりたい」「自然に関わりたい」という想いから新たにスパイスを育て、加工し、商品として販売する会社を立ち上げました。
きっかけとなるスパイスとの出会いは、2011年、世界一周の旅をしている際に、国や地域、作り手によって香りの変わるスパイスに無限の可能性を感じ、惹かれたそうです。また、前職は東京で農業とは関係のない会社で働かれていた山田氏ですが、当時から趣味で千葉県松戸市にて夏野菜を育てており、農業の面白さや厳しさを実感されていました。東京だと1つの仕事が大きな額にはなりますが、野菜は何百円の世界であるのにもかかわらず、消費者に喜んでもらえるのが面白さの1つなのだそう。
そんな農業に期待を抱いて移住を決意した山田氏は、移住してからすぐにスパイスを育て始めたわけではありませんでした。初めのうちは、「仁多米」という地元のお米の品種から取れる玄米を使ったラーメンの麺やパンケーキミックスに加工して販売していました。地元のお米がせっかく美味しいのにあまり売れておらず、地域おこしが地域で必要とされていたためお米を加工するという形で手伝っていたようです。
しかし、一方で近年健康を意識して小麦蛋白の摂取を避けるグルテンフリーが一般化され、ブランド米によるグルテンフリーを謳った商品の販売が増えてきていたため何か新たな挑戦が必要だと感じ、雲南市がスパイスを名物として広めたいという市の後押しもあって、スパイスを育て始めました。
地域の方との関係を大事に
移住先の島根では新たな土地、農業への挑戦ということでわからないことも多い中で、山田氏は地元の方との関係を大事にされています。特にコミュニケーションにおいては、地域の人が何か困っているときは積極的に声をかけているそうです。地域の人との協力によって育て方の伝授をしていただけてより良いスパイスを作れる上に、相手にも何か恩返しができると考えています。
ただ、初めのうちはコミュニケーションをする上で価値観が異なっていたという難点もありました。それでも山田氏は地域の人々が持つ常識や考えを自分のものさしで測るのではなく、理解することでコミュニケーションを円滑にすることができるようになったそうです。
実際、相手の気持ちを汲み取ることでより親密になることができ、スパイスの育て方や加工する際の注意点なども地元の方に詳しく教えてもらっていました。
想いとコダワリ
手に取る人にワクワクしてもらいたい
スパイスを使った商品の1つとして、クラフトコーラを売り出している出雲SPICE LAB.ですが、地元で人気に火がつくまでは紆余曲折がありました。初めのうちは島根発のオリジナルブランドとして地元地域で開催されるイベントなどでコーラとしてではなくスパイスを使ったオリジナルドリンクとして売っていましたが、当時まだ人気とは言えなかった出雲SPICE LAB.が出すオリジナルドリンクでは売れなかったそうです。イベントに来たお客さんには興味は持ってもらえましたが、どんな味なのか想像がつかなく、気には止めてくれるものの足を運んでいただけないことも多々ありました。
そこで、誰でも知っているコーラを商品名につけることでイメージしやすくなりました。山田氏は特別コーラが好きだったわけではなかったみたいですが、他のクラフトコーラを作っているブランドにお話を聞くなどしてより美味しいコーラを研究することで、地域の方に徐々に人気が出たそうです。
人気が出始めた頃からラインナップを増やしています。その一つが子供向けコーラ「子供コーラ」です。島根には子育て世代が多く、定期的に出雲で開催される食のイベントにも多くの親子連れの来訪があったことを受けて、子供を対象としたクラフトコーラの製造をスタートしました。 当初の同商品は粉末スパイスをたくさん入れており、スパイシーで子どもが飲みにくいとも言われていたため、子ども向けに飲みやすいハチミツベースのコーラを作ってみようということで試行錯誤の末、今の子供コーラは作られています。 子どもがコーラ飲みたいとなっても、甘味料や香料などの問題で飲ませたくない、でも出雲SPICE LAB.のクラフトコーラは何が入っているかわかるから安心できると言ってもらえたそうです。
他にも、山田氏が東京で働いていた頃に疲れを解消するためにエナジードリンクをよく飲んでいたという経験を生かして、オフィスの人向けのエナジードリンク「クラフトエナジー」を発売されています。いわゆる一般的なエナジードリンクとは違って、元気はでるけど、自然由来でできている物があるのがいいなと山田氏自身が考えていたことをもとに作っています。
こだわりは素材だけではなく、パッケージにも山田氏の想いが詰まっています。魅力的なデザインがなされたパッケージは山田氏ご自身でコンセプトを考えて、デザインを松江市のデザイナーにお願いしているそうです。 デザインにも、一つ一つに山田氏の遊び心が施されています。例えば、クラフトエナジーには、雷のマークが大きく映っていますが、雷が落ちた場所は土地が肥沃になって稲がよく育つという話を地元で聞いたことと、エナジーのイメージが雷であることを表してデザインしたそうです。こういったエピソードをデザインに反映したいと、デザイナーと相談してパッケージは作られています。
出雲 Spice Lab. が考える未来
農業自体をもっと知ってもらいたい
スパイスを通してワクワクしてもらえることを大切にしている。これは山田氏が大事にしている出雲SPICE LAB.の理念ともいえるでしょう。今後、さらに商品の幅を広げ、より多くのワクワクを届けていくことを目指しています。コーラが嫌いな人がこのクラフトコーラなら飲めるというように他の商品でもより多くの人がスパイス商品を楽しめるためにも種類を増やしていく見込みです。また、今後は地域の方とのコラボレーションを通じ、新たな商品を全国に届けていきたいと考えています。
他にも、商品だけではなく、農業自体の魅力をもっと知ってもらえるような活動を今後は展開していくようです。出雲SPICE LAB.は今後、自社ブランドだけではなく、農業を通じてワクワクを届けていくスケールの大きなことにも挑戦される予定です。新たな挑戦から目が離せないですね。
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