麻布香雅堂
私たちが 麻布香雅堂 を愛する理由
業界の未来と真摯に向き合う、香り文化のパイオニア
人間の感覚で最も繊細なものは嗅覚であることをご存知でしょうか。視覚で見分けられる色は100万~1000万種類であるのに対し、嗅覚はなんと約1兆種類の香りを嗅ぎ分けられることが近年の研究で分かっています。色んな人との思い出が香水などの香りと結びついていたり、料理を美味しく食べられたり、のどかな場所で空気が美味しいと感じたり…日々に彩りを与えてくれているのは意外と嗅覚なのかもしれませんね。
日本の文化としての香りは平安時代以前に仏教とともに中国から伝来したことに始まり、室町時代から続く香道や、お仏壇のお線香、また近年テレワークの流行に伴ってお香がちょっとしたブームになるなど、私たちの生活にとっても意外と身近なもの。しかしその一方で、お香の業界は現在ある喫緊の問題に直面しています。それは原材料となる香木の枯渇。
今回ご紹介する麻布香雅堂[こうがどう]は、そんな業界が直面する問題に対して真摯に向き合い、日本独特の香りの文化を発展させながらも次の世代へと守り繋げていく、そんな思いを持った和の香りの専門店。お香のサブスクリプションOKOLIFE[オコーライフ]や、様々な企業やアーティストらとコラボレーションして先進的な取り組みを次々と行う現代日本の香り文化のパイオニアでもあります。[プロジェクト一覧]
今だからこそのお香の楽しみ方や、未来に向けて文化を繋いでいくためにはどうすればいいのか、店主の山田さんにお話を伺ってきました。
立ち上げストーリー
伝統を守るための変革
– お店の成り立ちや、現在のスタイルになったきっかけを教えてください
京都で200年続く香舗の次男だった私の父が独立して、約40年前にここ麻布十番で始めたのが麻布香雅堂です。父の仕事は香木の鑑定と販売、良い香木を仕入れてお客様に販売すること。当時のお客様は香道や寺院関係の方がほとんどでした。
私が香雅堂を手伝うようになったのが10年ほど前、ちょうどその頃から中国で香木バブルが興りました。需要が急速に高まり、日本国内で保管されていた香木の約70%が中国に流出したと言われています。もともと減少傾向にあった香木の値段は過去30年間で5〜10倍に上昇、現在もこの状況が続いています。
さらに上質な香木は育成に長い年数を要するので、今すぐに新しいものを入手することは極めて不可能に近いんです。このままでは日本の香りの文化が絶たれてしまうのではないか。香木そのものを売るようなビジネスモデルから脱却しないといけないのではないか。そういうことを日々考える過程で、自然発生的に(香木を練り込んだスティックタイプの)お香などを扱うようになっていきました。
– お香だと香木の消費は少なくて済む、ということですか
そうですね、育成・養殖が比較的容易な種類の香木を使用しますので、香道で必要になるような持続可能性が危うい資源を使う必要がありません。
父が長年の仕事で収集してきた香木を可能な限り大切にゆっくりと、私の代だけではなく、おそらく次も、その次くらいまで数代に渡って使用しながら、次の世代の上質な香木が育つまで香りの文化を繋いでいきたいですね。
ビジョン
オープン・フェア・スロー
– 山田さんはnoteなどで様々な情報を積極的に発信されていますが、そこにはどんな想いがあるのでしょうか
もちろん麻布香雅堂のことを知ってほしい、色んな方に香りの文化に興味を持っていただきたいということはありますが、なによりも業界をオープンにしていきたいのが第一です。例えば精油(エッセンシャルオイル)業界は世界中に大きなマーケットがあり、様々な情報が各所から発信され、香りの成分一つ一つについても科学的な分析に基づく効能のエビデンスなんかも分かっていたりします。
しかし日本の香り業界は、文化としては比較的小規模かつ生産者も限られていたことなどから、明らかにされていない情報や生産者でもよくわかっていないことが多いんです。効能はともかく、お香に含まれている原材料すら開示されていないことも多々あります。
香りを感じるということは多少なり何かを身体に取り込んでいるということですから、そういう部分もしっかりオープンにしてお客様に安心、信用していただくというのが業界や文化が長く続いていく上で大切だと考えています。また先ほどお伝えした香木が瀕している危機など業界のことについても、なかなか一般の方に知っていただく機会がないので、情報を発信することで多くの方に興味を持っていただけたら嬉しいです。
そういったことも含めて、私達は「オープン・フェア・スロー」の3つの考え方を活動のキーワードとして大切にしています。
– オープンは今伺った通りだと思いますが、フェアとスローについてはいかがでしょうか
フェアは情報をオープンにするだけではなくしっかり公平に伝えていくということ、また原材料を公正に使用していくということですね。
香木の枯渇の理由として中国で興ったバブルのことをお伝えしましたが、実はそれ以前の1980年代に当時経済成長を遂げてリッチだった日本が、香木の主要な原産地であるベトナムで青田刈りを行なってしまったということも大きな理由の一つだと言われています。業界としてそういったことを繰り返さない、サステナビリティの輪を繋いでいく意識を持つというのは大切だと思います。
スローについては言葉の意味の通り、香木という資源をゆっくり使っていくこと。香りの文化を未来に繋いでいくために、良いものを少しずつ楽しむこと。また生産者としてそういった文化を多くの方に、製品や情報の発信を通じて、伝えていくということですね。
人や環境への配慮のかたち
香りの文化を未来へ繋ぐために
– どんな方に、どのようにお香を楽しんでもらいたいですか
お香の文化は高齢化が進んでいて、世代交代がうまくいっていないのではないかと思っています。そういう意味ではやはり20~40代の若い方に使ってほしいとは思いますね。お土産屋さんで買ってみてそれっきり、とか友人へのギフトとして買ってみたけど日常では使っていないとか、そういう人も多いようです。
海外のエッセンシャルオイルやルームフレグランスなどと比べて、若い方に対する情報発信が行われてこなかったためにやや敷居の高さを感じさせてしまっているということもあると思いますので、情報の開示はもちろん、お香に親しんでもらうためのコンテンツを提供していければなと思っています。現在noteで展開しているOKOPEOPLE(お香や香りについてのエッセイなど)もその一つです。
また今は多くの方がリモートワークや働き方改革などで家にいる時間も増加傾向にあるので、そういった方々にも使ってもらえたら嬉しいですね。環境を変えたいですとか気分転換したいといったニーズにはぴったりだと思います。火をつけて、煙が立って、良い香りがするというのはなにかこう深い安心というか、人間の根源的な安らぎがありますよね。コーヒーを淹れるとか、植物に水をやる、みたいな感覚で日常に取り入れてみて頂ければと。
– お香のサブスク的なサービスも手がけていらっしゃいますよね
OKOLIFEですね。私たちの「オープン・フェア・スロー」を体現するためのサービスとして2019年から始めました。
原材料からその割合まで可能な限り公開し、基本的には天然素材100%のもの。スローの観点から、内容量は毎月10本とやや少なめですがその分上質な原料を使用しています。リーフレットやプチギフトなどでより深くお香の世界を楽しんでいただけるような工夫もしているつもりです。
おそらく日本初の試みで、私たちも恐る恐るではありますが、今では多くのお客様にご好評いただいております。新しいものに挑戦する姿勢はこれから先も大切にしていきたいです。
– 香雅堂さんの新しい取り組みや、この先ますます働き方が変化していく中でお香ブームも来るかもしれませんね、供給が問題ですが…
それはもちろんありがたいんですが、別に私はブームになってほしいわけではないんですよね。仰る通り、供給がスローに出来なくなってしまうというのもありますし、何より文化としてブームや刹那的なインパクトで終わらせたくない。もちろんより多くの方にお香を使ってみて欲しいという気持ちもありますが、メインストリームの文化になって欲しいわけではなくて。香雅堂としてはお香をしっかり愛してくれる人を増やして、寄り添っていきたいと思っています。
次の香木の世代まで、50年なのか100年なのか正直私達にも分からないのですが、そこまでこの香りの文化を繋いでいけるように、私の人生の限り、細く長く付き合っていきたいですね。
– 文化と業界の未来に、この上なく真摯に向き合われていることがとても格好良いなと感じました。お香はもちろん、香りの文化における新しい取り組みを楽しみにしております。本日はありがとうございました。
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